脂肪肝とは その原因と症状

脂肪肝は、いまや国民の3人に1人が潜在的にかかっているといわれる国民病であり、生活習慣病の一つといえるものです。

肝臓に脂肪がたまりその機能が損なわれるもので、やっかいなことに、これといった自覚症状がありません

肝臓は丈夫な臓器ですが、それでもダメージを慢性的に受け続けると、肝細胞の再生が妨げられます。

動脈や門脈からの血液を通じて、代謝しきれない量の物質が肝臓に運び込まれると、脂肪が溜まりすぎて酸素や栄養が到達しづらくなった肝細胞が、壊死することもあります。

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「沈黙の臓器」といわれる肝臓の病気らしく、はっきりと体調の悪化を自覚したときはすでに手遅れの時もある、恐ろしい病気でもあります。

なお脂肪肝のための食事・食事療法については、関連サイト「脂肪肝のための食事~食事療法のポイント 1分理解」も、併せてご覧ください。

最近は脂肪肝と診断される人が急速に増えており、いまや成人男性の10%、女性の3%にみられる症状となっています。

脂肪肝という病気はこれといった特徴的な自覚症状がないことから、発見されるパターンとしては健康診断の際の血液検査などによる偶然の発見が、もっとも多いとされます。

ただし脂肪肝が進行した場合は、「疲れやすい・体がだるい・食欲がない」といった、肝臓病の一般的症状があらわれます。

そもそも「肝臓」は、血液検査や画像診断によって異常を発見しやすい臓器です。肝臓の病気は全般に、「特有の症状」とされるものがほとんどありません。黄疸のように異常が外からはっきり見てとれるようでは、すでに病状がかなり進行している段階だからです。

したがって脂肪肝も、はっきりそれと特定できる症状は無いのが普通ですが、触診や画像検査で肝臓の肥大が判明するケースは少なくありません。


脂肪肝の検査で調べる項目は、主に「ALT(GPT)」「AST(GOT)」「γGTP」の3つです。これらはいずれも酵素ですが、いわば身体の”化学工場”である肝臓の組織・細胞に異常があると、数値が上昇します。

会社の健康診断や自治体の特定健診で行われる血液検査にはこの3項目が必ず入っているので、結果が基準値内かどうかチェックしてみましょう。

基本的にはこれらの数値、ALT(GPT)AST(GOT)が基準値(正常範囲は30IU/L以下[特定健診2013年版]。なおIU/Lは1リットル中の国際単位)をオーバーしている場合は、警戒してかかるべきです。

アルコール性の脂肪肝の場合には、γGTPの数値も100~200IU/Lと高値を示します(γGTPの基準値は50IU/L以下[特定健診2013年版])。

もっとも、健康診断で正常だったから安心…とは必ずしも言えるものでなく、脂肪肝の患者でALT(GPT)が異常値だった人は全体の3割強に留まるといった、厚生労働省の調査結果もあります。

また、体型がやせていれば、脂肪肝に無縁ということでもありません。太っていない人の中だけで調べたところ、およそ5人に1人が脂肪肝であったという調査結果もあります。

脂肪肝の厳密な定義はないのですが、一般には「肝臓内の(正常な肝臓の場合は4~5%程度の)中性脂肪が、10%以上になった状態」、また病理学的には、「顕微鏡による標本観察で、100個の肝細胞中に30%以上の脂肪空胞が認められる場合」とされます。

脂肪肝が進行すると肝臓が白く光ってくるため、これらの検査による識別・診断は比較的容易です。

精密検査となった場合は、超音波検査やCT・MRIなどの画像検査、あるいは針を刺して肝細胞の一部を採取する「肝生検」によって、肝臓の状態をさらに詳しく調べることになります。

最近は「MRエラストグラフィ」・「超音波エラストグラフィ」等、身体の負担が少ない検査方法(自由診療)も出てきていますが、導入している病院はまだ少なく普及もこれからです。


もともと日本人は、別名「節約遺伝子」とも呼ばれる、脂肪を蓄積しやすい遺伝子の素因をもっているとされます。さらに現代の多忙で不規則な生活環境が、患者の増加に拍車をかけているとも指摘されています。

すなわち内臓脂肪の蓄積により脂肪肝のみならず、派生的に動脈硬化・高脂血症・糖尿病・高血圧等の生活習慣病をもたらすリスクも、大きく高まります。

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脂肪肝の主な原因は、一言でいってしまえば「肥満」「アルコール」「糖尿病」の三つとなります。最初のふたつが、原因のおよそ7割を占めています。

このうち肥満は、食べすぎや偏食による過栄養、そして運動不足などによりもたらされ、内臓に脂肪が貯まるものです。痩せているから、お酒を飲まないから脂肪肝は関係ない…ということは、決してありません。

アルコール性脂肪肝が減少傾向にあるなかで、むしろ警戒が必要とされているのが、「非アルコール性の脂肪肝(NAFLD、ナッフルディー)」です。

非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の原因は、脂や糖分の多いバランスを欠いた食生活や運動不足による、内臓脂肪の増加です。

女性も更年期を迎え50歳を過ぎた頃から、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)が増える傾向にあるので、注意が必要です。最近は性急なダイエットを行った若い女性が、体内のタンパク質が不足して脂肪が排出しにくくなり、肝臓にたまることによって発症するケースも珍しくないようです。

この非アルコール性の脂肪肝(NAFLD)が恐ろしいのは、進行した場合は「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH、ナッシュ)」と呼ばれる病気へと進む可能性があることです。脂肪肝の一割程度、患者数にして約100万人が、このNASHに該当しています。

NASHは比較的最近話題になりはじめた病気であり、脂肪肝にストレスが加わって起こるとの説もありますが、詳しい原因は不明で、まだ確立された治療法もありません。近年の研究において、NAFLDやNASHの発症に「PNPLA3」という遺伝子の影響があること、すなわち遺伝的要因もあることが判明しています。

NASHは血液検査では診断が難しく、CT検査でも見落とされるケースがあるようです。NASHの確定診断には、肝臓の組織の一部を採取して検査する「肝生検」が必要になります。

NASHは、他の肝臓の病気と同じく、初期の自覚症状はほとんどないのですが、患者のうちおよそ1割程度は病状が進行し、数年以内に肝硬変や肝臓がんになるとされます。

NASHは、アメリカにおいてはウィルス性肝炎やアルコール性肝障害に次いで多い肝臓病となっていますが、欧米型の糖分や脂の多い食事に慣れ、運動不足気味の日本人にとっても同様の状況が遠からず到来するであろう、という警告も発せられています。

肝炎というと、通常は「ウィルス性肝炎」をイメージしがちですが、その意味でNASHは「生活習慣病の延長線上にある肝炎」ということになります。

アルコールについては、日本酒三合で毎晩の晩酌を5年間続けると、脂肪肝が発症するといわれています。脂肪肝となったあともお酒を飲み続けた場合、進行して慢性肝炎あるいは肝硬変や肝臓がんにいたる可能性が高まります。

肝機能数値は男女差の大きい項目でもあり、とりわけ女性の肝機能の早期異常は見落とされやすいと言われます。 γGTPが基準値に収まっているからと安心せず、特に日常的にアルコールをたしなむ女性は、その摂取量に注意が必要です。

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脂肪肝 治療のための対策

脂肪肝の治療ですが、基本的には投薬の必要がない病気です。またデータ的にも長期のものが無く、薬物治療で確定的効果があると断じられるものは、まだありません。医師も基本的に薬剤を使用せず、脂肪肝の原因をコントロールするか取り除くことに、治療の重点を置いています。

「ウコン」や「マリアアザミのエキス」といった、お酒のみのためのサプリメントも有名ですが、効果に対する見解の確立までには至っておらず、またウコンなどは摂りすぎると貧血になるとも言われますので、サプリメントに過度に期待するのは避けたほうがよさそうです。

ちなみに「脂肪肝に効く」として、特定の食品やサプリメントが時おり脚光を浴びることがありますが、単品に頼りすぎるアプローチは避けるべきです。

たとえ脂肪肝の改善データが提示されていても、調査のサンプルや方法に偏りがある場合、誰に対しても同じ結果がもたらされるとは限りません。

たとえば「一日数杯のコーヒーを飲むと脂肪肝が改善される」という言説を時折見かけますが、母集団が数百人程度のひとつの実験結果だけからは、せいぜい「相関関係があるかもしれない」という推定が立つに過ぎません。「コーヒーを飲む=脂肪肝が減る」というストレートな因果関係は、何ら確立していないのです。

原因が不規則な生活や運動不足等も加わった複合的なものである以上、やはり「特効薬ですぐに一発解決」とはいかないのです。

何度でも強調しておきますが、単品の食事やサプリに頼り過ぎず、食事を含めた生活習慣全体を見直していかねばなりません。


それでは具体的な対策は?となりますが、これはすなわち、「食事療法」と「運動」がその中心となります。

食事の量をこれまでの25~30%程度減らし、軽い運動を続けることによって、2週間を過ぎたあたりからGPTやGOT、γGTP値も下がってきて、状態が好転してきます。

引き続きその状態を続けることで、1~2ヵ月後には肝臓が正常な状態に戻ってきます。

また禁酒すれば、早ければ1ヵ月、遅くても3ヵ月ぐらいでこれらの数値がだいたい元に戻るとされています。

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脂肪肝 治療のための食事と運動

脂肪分の多い食事をすることで脂肪肝になるものではありませんが、成人が一日に必要な摂取カロリーは、一般的に1,600カロリー程度と言われていますので、その線に沿って栄養バランスのよい食事をとるように心がけます。

肝臓の病気は脂肪肝を含めいろいろありますが、食事療法としては、慢性肝炎まではバランスのよい食事をとることで通常は十分とされます。ただし、脂肪肝があまりに進行していると診断された場合には糖質と脂質は控え、たんぱく質・ビタミン・ミネラルなどを十分とる必要があります。

もともと肝臓には約3%の脂肪がありますが、長い年月にわたり多量のお酒を飲み続けていると、分解されるべき肝臓内の脂肪が追加的に蓄積され、脂肪肝の原因になります。

肝臓は、歳をとるごとにその大きさも小さくなり、アルコールや薬などを代謝するのに時間がかかるようになります。いったん傷ついた肝細胞を修復する力も、だんだん弱くなってきます。

したがって脂肪肝対策としては、アルコールは可能ならやめるべきですが、仕事上どうしても無理な場合などは、断酒がかなわぬまでもせめて、その摂取を極力控えるようにするべきでしょう。

成人男性の一日のアルコール摂取量の目安は、約20グラム。日本酒換算で2合、ビールなら中びん2本までが、一日の飲酒許容量とされます。またいわゆる「休肝日」も、週に2日は設けるようにしたいものです。

ただしアルコールの摂取量と代謝時間は男女差・年齢・体格などによる個人差があるため、日頃から飲酒量の多さを自覚している方は、定期的な肝機能検査を受けるようにしましょう。

日頃から適度な運動によって筋肉をきたえておくことは、肝臓にとっても大事なことです。

筋肉には、肝臓が弱ったときに糖・アミノ酸の代謝を促し、有害物質の分解を助ける働きがあるからです。肝臓の代謝の一部を肩代わりしていることから、筋肉は「第2の肝臓」とも言われています。

肝臓内にたまった中性脂肪は、運動で減りやすいという特徴があります。

体重をほんの3%程度減らすだけでも、肝脂肪はかなり落ちます。またNASHの場合は5~7%程度の減量が、肝臓の炎症を鎮めるのに効果的とされます。

カロリーを消費するような運動でさえあれば運動の種類を問いませんが、長時間の歩行や水泳など、あまり頑張らずに長く続けられる運動(有酸素運動)が最適でしょう。

最大心拍数の50%程度(20~30歳代で130拍/分、40~50歳代で120拍/分)の有酸素運動(ウォーキングなど)を一日30分以上、できれば週に3回以上を目安として行ないます。

筋力トレーニングにも脂肪肝の改善効果があることがわかってきています。有酸素運動がいわば「筋肉の質」を高める一方、筋トレは「筋肉の量」そのものを増やします。

したがって「有酸素運動を中心に、筋トレも織りまぜた運動メニューを組み立てる」のがベストですが、いずれにせよ「長く続けられる運動を選ぶ」ことがポイントになることを覚えておきましょう。

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